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サイレンを鳴らし、車と車の間を掻き分け進んでいく救急車。一刻も早く患者を病院まで届けようと走り回る一台の車を見て、ある日ふと妙なことに気がついた。それは救急車(AMBULÂNCIA、またはEMERGÊNCIA(緊急)と書かれている)という文字が右から左に反対に書かれているのだ。ブラジルではうっかりミスなんて日常茶飯事のことだから「ははは、間違えてやんの。これは印刷ミスだな」と馬鹿にして見ていたが、実はそうではないらしい。ブラジル人に聞けばみんなちゃんと理由を知っていた。なんでも救急車が後ろから来たときに、自動車に乗っている人がバックミラー越しに見て、「AMBULÂNCIA」と正確に文字が読めるようにという配慮なのだそうだ。これはブラジルのみならず他の国々でも普通に浸透している習慣であり、それらの国々では誰もが知る常識なのであった。そうとも知らず、「なにかね、君たちは読み書きもまともにできないのかね」などと見下していると、自分が恥ずかしい思いをするから注意しなければならない。 ただ、それにしてもおかしな点がある。ブラジルでは救急車と消防車は逆さまの文字表示になっているのに対し、なぜかパトカーはそのままPOLÍCIAと表示されているのである。救急車と消防車は道を譲ってあげないと気の毒だけど、警察は別に譲らなくたっていいんだよ、あいつらのサイレンは半分は嘘なんだから、ということなのだろうか。それともパトカーが近くを通るだけで、サイレンなんて鳴らさなくても、人々は恐れおののいて勝手に道を開けるので、わざわざ文字まで逆さにする必要はないということなのか。真相はどうであれ、いやはや謎が多い国である。
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