ブラジル豆知識
サンパウロの地下鉄に異変

 最近、サンパウロの地下鉄がすごいことになっている。どうすごいかというと、すさまじい勢いで近代化、洗練化が進んでいるのである。ここ数年の間に次々と新しい駅が増え、利用客数が大幅アップ。毎年のように運賃もうなぎ登り。お隣アルゼンチンの首都ブエノス・アイレスでは地下鉄(Subte)が1ペソ10センターボ(2010年2月現在約26円)なのに対し、サンパウロは2レアル55センターボ(約126円)とおよそ5倍という事態になっており、早い話が相当稼いじゃってるのである。相当稼いじゃっている人間、または組織は時として無駄遣いをしたがるものでサンパウロのメトロにもしっかりとその傾向が表れてきている。

 まず一つは最近からハイテク機能を駆使した新車両が東西を結ぶグリーンラインに続々登場した。あまり大声では言えないが、この車両にはクーラーまで備わっている。ルーラ大統領が全世界に向け、温室効果ガスを2020年までに少なくとも36%減らすと豪語したばかりのこの時期にブラジル最大の都市における最大の公共交通機関に今までなかったクーラーを導入しているのである。それも程よく、申し訳程度になどという生易しい冷房ではなく寒くて体の温度調整機能が狂うぐらいにガンガンに効かせている。こうなったらブラジル政府は「本当はクーラーを全快にしたほうがむしろ環境に優しいんですよ」などという自論を展開するしかない。  新車両には次の駅を伝える電光掲示板や自動アナウンス機能も備わっている。旧車両では次の駅の名前を放送するのも全部運転手がマイクで喋るのが普通だった。人によっては面倒臭がって何も言わない人、駅名を間違てばかりいる人、カツゼツが悪く何度も言い直す人などがいて、あれはあれでなんともブラジルらしかった。対して新機能は便利さが増した分、無機質な感じがしてちょっぴり寂しい。

新車両の中は広々としてクーラーも完備 次の駅が電光掲示板で一目で分かる。


 さらに1月下旬にオープンした最新駅、サコマにはもっともっとすごいハイテクな世界が広がっていた。ホームと線路が自動ドアで仕切られ、改札口一つ一つにも自動開閉式の壁が設置されている。かといって改札口を飛び越える人が多いとか、線路に落ちる人が多いとかいう話はあまり聞かない。やはりもうこれはサンパウロの地下鉄公社は相当お金持ちになっちゃったのであると考えるのが自然である。

 それに加えて最近、駅のホームで青い制服を着た若者たちが出現し始めた。シャツの胸元と背中には「Posso ajudar?」と書いてある。これは英語でいうところの「Can I help you?」の同意語で、彼らはいわば乗客への案内、手助けのために雇われたバイト職員たちだ。ほとんどが10代の少年少女ばかりで、駅や時間帯によっては6人も7人もいたりする。若者がそれだけ集まれば気分が高揚して遊んでしまうのは避けられるはずもなく、駅のホームを走り回っていたり、お喋りに夢中だったりととにかく楽しそうにしている。その光景がまた経済的に余裕のある家が何人も不必要なメイドを抱えている状況と重なって見えたりなんかしてどうもいけない。このままだといずれメトロ博物館、メトロ記念館、メトロ記念碑など訳の分からない記念物が次々と建ちそうな気配がするのだが、考えすぎだろうか。

新しくオープンしたサコマ駅のハイテク設備