 ついにオープンした牛丼屋
2010年3月9日、サンパウロ市のリベルダージ大通り沿いに日本の牛丼チェーン、すき家が開店した。牛丼と言えばラーメンやカレーに並ぶ日本の大衆料理の代表である。ブラジル滞在の長い日本人なら誰もが恋しく、懐かしむ故郷の味ではないだろうか。その牛丼を、それも日本の全国基準ともいえる牛丼チェーンの味をこれから毎日堪能できるようになるとは、日本とブラジルの距離も随分と縮まったものである。 しかし喜ぶのはまだ早い。戦いは本当に始まったばかりで、これから牛丼がブラジルで浸透していくと決まったわけでない。日本で売れているからといってブラジルで成功できるかどうかは誰にも分からないのである。奇しくも隣には不動の人気を誇るマクドナルドがどどーんと店を構えており、少し行ったところには値段の安さではどこにも負けないハビブスもあり、日米伯ファーストフード対決といった油断ならない状況になっている。すっかり学生街となったこの地区では客の多くが若者であるから、それこそファーストフードのポリシーである安さ、速さ、美味さが勝負の鍵となりそうだ。 いざ店に入ってみると、店内は牛丼屋というよりファミリーレストランのように清潔で天井が高く、そして広い。日本の牛丼屋のような狭さ、貧乏臭さがなく、オシャレといっても言いぐらいである。メニューを見ると、Gyu-donとそのまま日本語をアルファベット表記しているのに対し、大きさはP(小)、M(中)、G(大)というブラジル人にも分かりやすいサイズ分けがしてある。さっそく牛丼の大を注文したら、店員の女の子が首をかしげて膠着してしまった。なにかと思ったら、「牛丼」が通じなかったようである。もう一度言い直したら、また変な顔をされたうえで「ああ、ギュードンのことね」と発音を直された。まさかブラジルに来て、ブラジル人の女の子に大好物の発音のレッスンを受けるとは夢にも思わなかった。こんな状況がまだ嘘みたいでなんだかとってもシュールなのである。出てきたGyu-donは、丼ではなく、カレーの皿のような器に入って登場した。これを牛丼といっていいのかどうかは判断がつかないが、ブラジルだからよしとされるだろう。肝心の味は、日本のものに限りなく近く、肉は柔らかく甘めである。この肉が甘い、というのが実は一般のブラジルにはかなり抵抗があるらしく、ブラジルにおける牛丼の明暗を分ける今後の鍵となりそうだ。甘さに抵抗があろうと、安さで売って国民を少しずつ慣らしていけば、いずれ病みつきになる可能性もあるし、やっぱり肉は塩味に限る、と大衆が言い張る可能性もある。牛丼にはぜひYAKISSOBAを越える存在になってもらいたいものだが、それにはどうしても時間がかかりそうである。
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| 広々とした店内 |
牛丼というより牛皿に近い |
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