日本で「早い、安い、美味い」食べ物といえばラーメンや牛丼が頭に浮かぶが、ブラジルではホットドックがそれに当たるのではないだろうか。「ホッチドッギ」とポルトガル語訛りの英語で呼ばれたり、「Cachorro-quente(カショーホ・ケンチ)」と英語名を直訳しただけのネーミングが使われているブラジルのホットドック。その歴史は1926年頃、企業家のフランシスコ・セハドールが自分が経営するリオデジャネイロの映画館で売り出したのが始まりだという。それから長い年月を経て、ホットドックの人気はブラジルがアメリカ文化の影響を強く受けるようになった第2次世界大戦後には全国で不動のものとなっていたそうだ。

 サンパウロ市だけでもいたる所に屋台やスタンドのホットドック屋があり、だいたいどこもそれなりに早く、まあ安い。一番重要な「美味い」については店によってまちまちなのでどの店で食べても美味いとは断言できないが、不味くて食えたもんじゃないという代物には幸運にもまだ一度も遭遇していない。

サンパウロではミニバンでホットドックを売っている店が多い ポテトチップスをのせるのが特徴

 ブラジルのホットドックにはアメリカのホットドックのようなザワークラウト(キャベツの漬物)はあまり使われず、その代わりにマッシュドポテトやスティック型のポテトチップスがトッピングの主役となっている。また、パンをプレスしてカリカリにした状態で食べることも流行っている。店によってはパン1つに対しソーセージを2本入れてくれる気前のいいところや細くて短いソーセージを入れて終わりというケチなところもある。値段についても同じ「安い」の中にも異常に安い店まであり、そういう店は「何の肉を使っているのか怪しい」と噂されたりもする。不衛生な店もあるので屋台で食べるときには十分に気をつけたい。信用できる店かどうかはやはり評判と経験に頼るしかないだろう。

 ブラジル人のホットドック好きに便乗し、2001年にサンパウロ市で誕生したのが「BLACK DOG」。ホットドックのファーストフードチェーンだ。「BLACK DOG」は清潔な店構え、24時間営業といった武器を駆使して店舗を次々と拡大し、大成功を収めている。特にこの24時間というのがポイントで、日本人が飲み歩いた末に深夜に小腹を満たそうとラーメン屋に入るように、ナイトクラブやバーで騒ぎ疲れたブラジル人はホットドックで空腹を満たすのだ。ただし、「BLACK DOG」に関しては残念ながら「安い」というのは当てはまらない。サイズは大きいもののホットドックにしてはかなりいい値段がする。「BLACK DOG」も昔は道で細々とホットドックを販売していたのだが、店舗を構えるとなると経費やなんだでそれまでの道端価格で売り続けるわけにはいかなかったようだ。それを踏まえると「早い、安い、美味い」の3拍子を揃えるには屋台であることが大きなポイントとなりそうだ。

ジャルジン・パウリスタ地区にあるBLACK DOG1号店