ブラジルのピザは世界一だ、と豪語する人たちが結構いる。もちろんそんなことを言うのは母国を愛して止まないブラジル人たちである。大抵そういう人たちは本場のピザがどんな味なのかを知らないのになんとなくブラジルのピザがbPだと信じているふしがあり、「イタリアに行ったことのある友達が言ってたんだけど」などの前置きがあればまだしも、イタリアはおろかサンパウロからも出たことのないような人間が想像だけで話していたりするから困りものだ。ブラジルで誰かが世界一と断言するときは「世界一は言いすぎだけど、多分それなりのレベルなんだろうな」ぐらいの姿勢で聞くようにしている。

 あんまり一番だと言われると逆に否定したくもなるが、ブラジルでも店によってはなかなか美味しいピザが食べられることは確かである。特にオーブンではなく薪で火を炊いて釜の中でじっくり焼く店は、芯までこんがりと生地を焼き上げ、香ばしいピザを作る。値段もリーズナブルなところが多い。デリバリーをしてくれるところも普通にあり、食事を作るのが面倒なときについつい注文してしまう。

 ピザ屋に食べに行くと、スウィート・ピザ(pizza doce)なんていうちょっと驚きのメニューが置いてある。文字通りピザのデザートである。ピザの生地の上にシナモンのかかったバナナが乗っかっていたり、チョコレートがトッピングされていたりして、軽くカルチャーショックを受ける。豪華なものになるとアイスクリームにチョコチップなんていうパフェのようなピザもあって遊び心をくすぐられる。これなら最初は普通のピザで口をしょっぱくさせておき、最後は甘いピザでお口直しなんて具合にピザ尽くしの食事が楽しめるのだ。ただ、そんなフルコースを体験すれば普通の人なら数ヶ月はピザのことは考えたくなくなるだろう。人によっては「ピ」と聞いただけで吐き気を催す人がいてもおかしくない。

 しかしなぜかしばらくするとまた無性に食べたくなる。それも一枚や二枚じゃなくどうせなら10枚ぐらい一気に貪りたいといった欲が出てくる。二度と食べるものかと誓ったあのチーズの固まりが世界一美味しい食べ物なのではないのかと思わず考え直してしまう、ピザはそんな魔力を持っている。

釜で焼く手作りピザは文句なしに美味しい これが噂の甘いピザ